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2011/12/07 認知症患者の自動車運転 免許制度と足確保の議論を
京都市北区で2月に起きた車など7台が絡む多重衝突事故で、京都府警は認知症の男性運転者に加え、車に同乗していた2人の書類送検に踏み切った。同乗者の立件は全国でも例がなく、介護家族たちに与えた衝撃は大きい。高齢ドライバーが増え続ける今、認知症患者の重大事故を防ぐためにも運転免許制度や交通の足となる移動支援を考える必要がある。
事故は日曜の正午、金閣寺近くの北大路通で発生した。府警によると、乗用車を運転していた男性(61)が意識を失って信号待ちの車列に追突。6台が玉突きになり、バイクの男子大学生が2カ月後に死亡、12人が軽傷を負った。
男性は2008年ごろにアルツハイマーと診断され、医師から運転をやめるよう忠告を受けていた。車に同乗していた男性の兄夫婦も診察に立ち会っていたといい、府警は9月、男性を自動車運転過失致死傷の疑いで、夫婦は運転を止める注意義務を怠ったとして重過失致死傷の疑いで、それぞれ書類送検した。
事故取材で見えてきた問題は大きく2点ある。一つは、認知症やその疑いがある運転者の把握が難しいことだ。
警察庁によると、全国の65歳以上の免許保有者は昨年1271万人で10年前の約1・8倍に増えた。府内も今年25万人を突破した。免許を持つ認知症の高齢者は全国に30万人以上いるとの推定もある。
認知症の人の運転は、空間把握ができず車体をこする▽行き先を忘れて迷う▽道路標識を認識できない-などの特徴がある。家族がこうした異変に気付き、診察や運転中止を説得しても本人に自覚がないため聞き入れられないケースは多い。「認知症の人と家族の会」(京都市上京区)の高見国生代表理事は介護家族の相談や苦労を踏まえ、「一個人、一家族で解決するには負担が大きい」と代弁する。
認知症と判明すれば運転免許は原則取り消し処分となるか返納するしかない。一方、認知症であることを本人や家族が公安委員会に申し出なくても罰則はない。今回の事故も申告はなかったとされる。
一昨年から75歳以上は免許更新時に認知機能検査が義務付けられた。だが60代は対象外で、若年性の認知症は家族らの申告がない限り警察当局が把握するのは困難だ。独居はさらにつかみにくい。当事者の自主申告に任せる現行制度を見直し、病院や警察など関係機関の連携で正確につかむ仕組みが必要ではないか。
問題点の二つ目は免許返納後の交通の足となる移動支援が十分整っていないことだ。特に地方は深刻で「運転免許を失うと生活が成り立たなくなる」(高見代表理事)
国立長寿医療研究センター(愛知県)の荒井由美子・長寿政策科学研究部長が昨年行った全国調査で、認知症の高齢者が利用できる外出・移動支援サービス(介護保険除く)を実施する市区町村は56%にとどまった。府内では綾部、福知山、京丹後、八幡の4市がバスや鉄道の料金補助を独自に行っているが、いずれも対象は70歳以上だ。
ドライバーの中に潜在する認知症患者。彼らを社会ですくい取り、運転を控えさせる手だてを探ると同時に、車に代わる移動支援も真剣に議論しなければならない。
[京都新聞 2011年12月07日掲載]



